流星を打ち砕け リリース記事


キンドルアンリミテッド、オーナーライブラリーで読めます。

内容紹介
人類滅亡級の隕石は核爆弾で破壊されたが
 散らばった破片は大量の流れ星になって降ってきた
 焼け跡を馬に乗って駆け回る藤原千秋
海の向こうへ行った世界で一番美しい猫クッキー
二人は別々の世界でお互いを探し求める



もう読んだよ。という方はこちらへ 


(しゅん)(ぎょう)(まき)()の道を走り抜け馬も負けじと(はな)(いき)(しろ)
(ひと)(うま)
(わき)()()らず追い追いて(あさ)()を目指し走り走りて

 パパとママがまだ夢の世界にいる時に、私が牧場の道で自転車を()いでいると、ベアトリーチェが柵を挟んで並走してきました。ベアトリーチェは白い鼻息で生温かい風を私の顔に送ってきます。



私:おはよう、ベアトリーチェ。

 空の端には太陽が赤い顔を出していましたが、牧場はまだ薄青く、何頭かの馬の影が草を()んでいました。


 ベアトリーチェは柵の端まで私と一緒に走りました。


 馬屋の前には既に何台かの自転車が並んでいました。どんなに早く来ても誰かが先に牧場に来ているもので、前に一度だけ朝の三時に来たことがあるのですが、その時でさえ誰かが先に来ていました。私も一番端に自転車を並べると馬屋に入りました。

私:おはよう、ロミオ。おはよう、ウシミ。おはよう、ドリス……

 私は馬屋から顔を覗かせている馬達に声をかけていきました。たいていは無言か耳を震わせるだけですが、鼻を鳴らして返事をする馬もいます。一七番目の馬屋で

私:おはよう、ユニコ。

 ユニコは目を細めて唇をまくりあげると、大きな白い歯とピンク色の歯ぐきを私に見せました。このブサイクな顔を見るたびに、私は馬鹿にされているんじゃないかと疑うのですが、ユニコがこの顔をするのは彼女を担当している私にだけなので、馬的な親しみの仕草なのかもしれません。


 私は馬屋の奥にある更衣室で制服からジャージに着替えると、飼葉桶に飼葉を詰めてユニコの馬屋に行きました。柵に飼葉桶をかけるとユニコは早速もしゃもしゃと食べ始めます。その間に私は道具室からフォークとバケツを持ってきました。フォークといっても農具用のフォークで、鶏ぐらいなら一突きで殺せそうな代物。それで汚れたワラとウンチを取り除き、新しいワラを敷いて、ブラシでユニコの体をマッサージ。それも終わるとユニコに馬具を着けて、馬屋の外へ連れて行きます。


 柵の門を開けてユニコを牧場に入れると、アリーに乗った伊集院先輩が歩み寄ってきました。彼女は高等部の二年生ですが、三年生はもう卒業したので今は彼女がポロ部の部長です。

伊集院先輩:藤原さん、ちょっといい? ユニコのことだけど。
私:はい。


伊集院先輩:先週まで様子を見ていたけど、やっぱりダルミグループとは馬が合わないみたい。アリーグループに入れることにしたから。よろしく。


私:はい。

 馬にも(にん)(げん)(かん)(けい)、いいえ、(うま)(げん)(かん)(けい)がありました。群れのリーダーに動きを合わせられない馬はグループから弾かれてしまうのです。後ろ足で蹴られたり、噛みつかれたり、そういう分かりやすいいじめもありますが、それより先に起きるグループの馬達といじめられている馬との間に走る緊張感は人間にも感じられるほどでした。だからケガをする前に人間が気を利かせて、違うグループに避難させるのです。


 私もユニコにまたがるとアリーと並んで歩かせました。相性は悪くないようです。軽く走らせてもみましたが、やはり動きは合いました。アリーが合わせてくれたようです。アリーは気立てが良く、来るもの拒まずの馬でした。あまりにも面倒見がいいのでお母さんと呼ぶ子もいます。でもアリーには一度グループから抜けた馬は絶対に許さないという嫉妬深さもあったのでユニコがダルミグループと険悪になっても、しばらくは様子を見ようという判断をしたのでした。

伊集院先輩:じゃあ今日からよろしく。


私:はい。

 伊集院先輩がアリーを走らせると、私も別の方向へユニコを走らせました。冷たい風が私の顔を掴みました。


 近衛学園のポロ部には一度早駈けを体験すると二度と退部しないという伝説があります。私は一年生の時に一度退部したのですが、その時はまだ中等部の三年生だった伊集院先輩がもう一度入らないかと誘ってきたのです。本当はいけないことだけど、先輩は私をロミオに乗せて、早駈けほどではありませんが風を感じるほどの速さで走らせました。飛んでいるようで落ちているような、何だか分からない不思議な感覚に襲われて、私はまたポロ部に戻る決心をしました。ちなみにロミオは(この)()(がく)(えん)ポロ部の真のリーダーで、全ての馬はロミオを中心に回っていました。ロバみたいにぼーっとした顔なのに不思議です。初心者には乗りやすいように足を折って地面に伏せるほど優しい馬でもあるので、ポロ部の子達は全員一度はまたがったことがあります。


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